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ヘルヴァボス分析 何故第7話はすれ違いに終わったのか① 〜ストラスとコミュニケーション〜

*ヘルヴァボスの注意事項に則り、18歳未満の閲覧非推奨

*あくまでもいちファンの個人的な分析・解釈です。特に後半は自己解釈も多分に含みます。今後のストーリーや他の方の解釈等と食い違っていても責任は負えないので参考程度にご覧下さい。

皆さんヘルヴァボス第7話は最後までご覧になりましたか?コントロール出来ないくらいの感情を抱えていますか?私もです。もう3週間以上経っているのにまだ引きずってます。抱えていない方はどうかそのまま正気を保っていてください。そこで、第8話が公開されるまでの間に、この苦しみから逃れるため、あるいはより自分を苦しめるためにこの記事を書きます。

ご存知の通り、第7話でメインキャラクターであるブリッツとストラスの関係はかなり拗れたことになりました。私の感情がキャパオーバーしているのは主にそれが原因です。あの2人が傷ついているのを見るのはかなり心苦しいです。ただ、あの2人がただ単に「かわいそう」なのかと言われると、そうではないと思います。この2人はどちらもそれぞれ他人との関わり方に問題を抱えているキャラクターで、今までも本編を通してそのことは表現されてきており、ある意味今回のエンディングはそのツケが回ってきた結果なのだ…と、私は思います。今回はまず、渦中の人物(?)であるストラスがコミュニケーションの面で抱えている問題について個人的に分析したことを書いていきます。

①ストラスが好意的に接している人々

本編でストラスが好意的に、かつ積極的にコミュニケーションを取っているキャラクターは多くはありません。事実上そうしたキャラは2人に限定できます。

  • オクタヴィア

皆さんご存知、ストラスの愛娘です。妻・ステラとの関係は良好とは言えないものの、第2話『Loo Loo Land』や劇中歌『You will be okay』で示されているように、ストラスは父親として娘のことを愛しています。オクタヴィアが幼かった頃もティーンエイジャーになった今も、ストラスの態度は変わらず、ちょっとウザいくらいヴィアを可愛がっています。

  • ブリッツ

こちらもご存知、我らが主人公でストラスの不倫相手です。不倫相手なので性的な意味で好きなのはもちろん、第2話で(実際には必要なかったにも関わらず)ボディーガードとして来るように頼んだり、第5話でお祭りに招待したり、第7話に至っては電話が掛かってくるなり大慌てしたりデートに誘われたと思ってはしゃいでいたりと何かと行動を共にしたがる傾向があり、また第6話ではピンチに陥ったIMPを助ける、無事を真っ先に確認するなどブリッツを純粋に気に掛けている素振りもあります。

②ストラスのコミュニケーションの問題点

ただ、ストラスの上記の2人に対する接し方には問題もあります。ざっくりまとめて言うとストラスは無神経で自分本位なコミュニケーションをしがちです。

この問題が顕著だった、というか恐らくストーリーの主軸であった第2話を例に挙げると、ストラスはヴィアが子供の頃好きだったルールーランドへ遊びに行くことを提案しますが、そもそもヴィアは遊園地に行きたくはなかったうえに、今まさに家庭崩壊の原因になっている父親の不倫相手が同行しているという最悪の状況に放り込まれ、最終的に我慢の限界を迎えます。このすれ違いはストラスがちゃんとヴィア本人の話を聞かずに「ヴィアが子供の頃好きだったもの」=「今でもヴィアが好きなもの」と信じ込んでいるせいで起こっています。明らかにヴィアは乗り気でないのに、自分のアイデアをヴィアが楽しんでくれると思いこんで、あるいは楽しんでほしいという気持ちが先走って、終盤になって本人と話し合うまで実際のヴィアの反応を真剣に受け止めていないわけです。しかも同伴者は両親が朝から怒鳴り合いをするまでに至った元凶。ヴィアの視点に立ってみればあの反応も理解できます。何してんだよクソ親父。

この問題はブリッツとの関係でも起こっています。ブリッツと一緒にいる時、ストラスはブリッツに対して公共の場でも「真剣な時は可愛い」だの「そこのセクシーな君」だの口説き文句のようなコメントをしがちですが、ブリッツの反応はと言うと傍目に見ても明らかに不機嫌です。ストラスからの電話への対応を見ても、性的な話題になるとストラスは楽しそうですが大抵ブリッツはうんざりした様子で、歓迎ムードではありません。第7話ではこうした性的な話題をほとんど持ち出していませんでしたが、逆に言えばかなり最近まで態度を改めていません。また、第5話冒頭でストラスが煙草の火をブリッツの角で消していたり、第6話でブリッツを「私のインプのおもちゃ/慰みもの(my little imp-ish plaything)」という風に呼んでいたり、こうした行為へのブリッツ本人のネガティブな反応は描写されていないものの、常識的にまぁ問題のある言動が見受けられます。

③第2話と第7話では何が違うのか?

ようやく本題です。ストラスのコミュニケーションの方法に問題があることは指摘した通りです。しかしオクタヴィアとの関係とブリッツとの関係がどちらも本編でフィーチャーされているにも関わらず、前者はちゃんとした対話の末和解した一方で、後者は対話をしたにも関わらず2人とも傷つく結果になりました。何故この2つの対話は違う結果を迎えることになったのでしょうか?

オクタヴィアの場合、確かにストラスが不倫によって家庭内不和を招いた、と責める気持ちはありますが、それ以上に父親が自分の前から永遠にいなくなってしまうことを恐れているのが分かります。

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Are you gonna run off with him? And leave me behind, go away where I can't find you?

あの男(ブリッツ)と駆け落ちするの?私を置いていって…二度と見つけられないようなところへ行くの?

この台詞は第2話冒頭の幼いオクタヴィアが見たという「屋敷のどこにもパパがいない/見つけられない悪夢」を思い出させる台詞です。この後、ストラスは明確にオクタヴィアを置いてブリッツと駆け落ちすることはしないと断言し、それを聞いたヴィアは安心した表情を見せます。第2話全体のストーリーから見ても、子供の頃の「大好きな父親に二度と会えなくなる」という恐怖は今もヴィアが心の奥底で抱えているものだと考えられます。ストラスの不倫が自分たちの家を怒鳴り声が響く場所に変えてしまったきっかけだったとしても、ヴィアはストラスから離れたいわけではなく、かつて悪夢を見た幼い自分を慰めてくれたようにそばにいてくれることを望んでいたのかもしれません。だからこそ、この親子の対話は成立したのです。双方がお互いを突き放すのではなくきちんと向き合って話すことができたから、ストラスもオクタヴィアもお互いを失いたくなかったからこそ、この2人の関係は改善され、最後にはストラスはきちんとヴィアの気持ちを聞くようになったのです。

対してブリッツの方はどうでしょうか。ある意味第7話終盤のブリッツの台詞で大体説明がつきます。

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Stolas, don't act like what we have is anything but you wanting me to fuck you, okay? You make that really clear all the time.

ストラス、俺たちの関係にお前 俺 とヤりたがってる以外のものがあるようなフリをするな、いいな?お前はずっとそう振る舞ってきただろうが。

ブリッツは自分とストラスの関係は「ストラスがセックスを要求しているから自分はそれに応えているだけ」だと考えている、またストラスの言動からそう考えているのだということをここで明言しています。ブリッツ自身が実際にストラスとの関係をどう思っているのかという話は複雑なので次回以降に回します。何故ブリッツが2人の間にこうした肉体関係しかないと言ったのかは②で述べたように、ストラスがブリッツと話している時、大抵内容は彼らのセックスについてかそれに関係のあることを考えれば、なんとなく察することはできます。しかし2人の関係性は性行為が大部分を占めているのも事実ですが、この直前の台詞でストラスはブリッツと一緒に過ごせて楽しかったこと、セックスではなく2人で話をしたり映画をみたり、寄り添って時間を過ごすことを提案しています。ストラスは心からセックス中心の関係から進みたいと思っているのでは…とブリッツに考えてほしいところですが、恐らくブリッツにとってはこれらの言葉はこのタイミングでは既に遅すぎたのだと思います。

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ブリッツはストラスがアスモデウスから「刺激(=不倫)のために完璧な人生を引き換えにした」と言われて顔を隠すのを見て、複雑な表情を浮かべています。最初は驚いてショックを受けたような顔をしていましたが、ストラスから目を逸らすと共に眉間に皺が寄り、画像のような気まずげな表情になっています。ハッキリとブリッツが何を考えているのかは分かりません。自分のせいでストラスが色々なものを失ったと信じての罪悪感?ストラスは自分と一緒にいることを恥じていると思って傷ついている?改めて自分達の関係は何なのかと疑問に思っている?あらゆる可能性を考えることができますが、この後ストラスがブリッツの手に触れようとした時に拒絶したことを考えると、このシーンのストラスの反応はブリッツにとって重要だったのでしょう。私はストラスがアスモデウスの言ったことに反論するのではなく顔を隠したことで、自分たちの関係は目を逸らしてしまいたいようなものだとストラスは思っている、とブリッツが結論づけたのではないかと思っています(第8話でその辺りが語られるかもしれないので分かりませんけどね!)。更に言うならば、ブリッツはこの時点でストラスとの関係はビジネスの為の肉体関係でしかない、そうあるべきだ、と自分から線を引いたのではないでしょうか。

心を閉ざしてしまったブリッツにストラスがいくら「それ以上の関係」を求めているサインを出したところで、もう手遅れです。父親を失うことを恐れていたオクタヴィアとは違い、他人を拒絶する体勢に入ってしまったブリッツにはこれ以上ストラスに今以上の何かを求める理由はありません。ブリッツには惨めったらしくストラスにしがみつく理由はないのです。一方がもう一方を突き放してしまえば、第2話のようには対話は進みません。ブリッツはストラスを突き放し、ストラスはブリッツの言葉を否定することも、その場で追い縋ることもできなかった為に、第7話はあの結末を迎えたのではないでしょうか。もしもブリッツがストラスを拒絶するのではなく、オクタヴィアが自分の恐怖を垣間見せたように、泣きながら自分との関係を恥だと思っているのか、とでも訊けば違った結末を迎えていたかもしれません。しかしそれは起こらなかった。既に彼らも我々もオジーの店で起こったことを見なかったことにはできないのです。

参考動画/画像引用元

Helluva Boss 第2話 https://youtu.be/kpnwRg268FQ / 第7話 https://youtu.be/8zyGQquL8VM